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3-2

みどりさんがくれたのは、「スタンガン」だった。
プレゼントに、「スタンガン」。

「これ―――」

「ん?使い方分からない?」と翔太サン。

いや、違いますって。

「なんでこんな物騒なモノを」

音楽室に来た翔太サンに「ババアから」と言われて渡された綺麗なラッピングのシロモノを戸惑いながら受け取り、ラッピングをはがして私は更に戸惑った。

「最近物騒でさ」

しれっとして翔太サンは答える。
でも答えになっていない。
思わず眉間にシワを寄せて翔太サンを見る。

「物騒なんだよ。ババアの周りが」

翔太サンは少し歯切れ悪く答える。
首を傾げると、もっと歯切れ悪く

「あいつ、ストーカーされてるみたいなんだよねえ」

と言った。

「は?」

「今のところつけられている以外は何もないらしいから、ユカちゃんが危険な目に遭うことはないと思うんだけどね」

私はぽかんと口を開けてしまった。
なんだそれは。そんなさらりと言わないでくれ。
冗談かと思ったけれど、翔太サンの困り顔と手にあるスタンガンを見ると、どうやら本気らしい。

「私より、みどりさん大丈夫なんですか?」

「んー」と言いながら、困り顔が続かない翔太サンは鞄からパイン飴を大量に出してきてテーブルの上に広げた。
半透明のプラスチックみたいな黄色のパイン飴。

「どうぞ」と言われて1コもらう。

「大丈夫。あいつは慣れてるから」

事も無げに翔太サンは言った。
慣れている、のか。

輪切りパインの形をしたパイン飴を口の中に入れる。

すっぱい。

なめた時の、舌触りが癖になる。
輪切りの部分のぎざぎざした部分。

「…翔太サンは?」

大丈夫なの?

翔太サンはひらひらと手を振り

「慣れてる」

と、みどりさんの時と同じように答えた。

(慣れてる)

想像がつかない。
そういうことに慣れてしまうこと。
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