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翔太サンはちらりとこっちを見た。
でも私はそれに気付かないフリをする。

「彼女じゃないよー。オレ、今彼女いないもん」

変に緊張してて、私は何でもないように「ふぅん」て相づちをする。

「何、妬いたの?ユカちゃん」

隣を見ると、翔太サンがにやにや笑っている。

「何で私が妬かなくちゃいけないんですか」

彼女でもなんでもないのに。

「そんなあからさまに嫌そうな顔しないでよ~」

翔太サンはクスクス笑っている。

大きな綿菓子の切れ端みたいな雪が降っている。
宙を舞う白が街をモノトーンに染める。
灰色の空、白い雪、いつもより音が聞こえない。
なのに隣の人の声がやたら響く。

「めずらしいね、髪おろしてるの」

全然関係のない話に移ってほっとした。
翔太サンには、何もかも見透かされてしまいそうな気がするから。

「寒いので」

防寒のため。あと、今まで伸ばしっぱなしで髪を結ばないととてもじゃないけれど見られるような髪型じゃなかったから。

翔太サンは苦笑して「ユカちゃんらしーね」と言う。

「おろしているの、かわいいよ。雰囲気変わるね」

「お世辞はいいです」

「お世辞じゃないよー。オレはいつも本気だよー」

白い目で隣の人を見る。

「信じてないデショ?」

大きく頷く。
翔太サンは大げさな仕草でがっかりしてみせる。
信じては、いない。
彼女がいたっておかしくないと思っている。
期待はしない。

(期待って何を?)

目を閉じる。
答えを探す気はない。

「ユカちゃん?」

翔太サンの声に目を開く。

のぞき込むアイスブルーの目に私は微笑んだ。
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