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1-2
私の苗字は「秋原」。「秋原佑香」が今のフルネーム。
ちょっと前までは「木村佑香」で、もっと前は「梅沢佑香」だった。
新しい苗字はそれなりに気に入っている。
少なくとも「梅沢」よりいい。
お母さんが再婚してそろそろ3年。
初めの頃に何となくあったギクシャクした空気がなくなって、なじんできたと思う。
ケン兄も、お父さんも。
(3年かあ)
そう考えると、お母さんが離婚した年がずっと昔のことのような気がする。
それは私は小5の時だったから、指折り数えてみたら片手でグーが作れた。
「ユカちゃんの字ってむずかしいねー」
感慨にふけっていたから、頭の中が一時停止になる。
「え?」
(ああ、漢字の話)
と気づくまで時間がかかってしまった。
目の前にいる翔太サンが
『空を翔るのショウに、丸太のタ』
と自分の名前の漢字を半ば強引におしえてくれたので、私もおしえる羽目になった。
私の名前を口で説明しても翔太サンにはピンとこなかったらしい。
ケン兄の部屋に連れて行かれ、
結果、自分の名前が書いてある楽譜が今2人の間にある。
私たちを囲んでいるのは、
電子ピアノにギター、
ドラムパッドやトランペット、
懐かしいリコーダー、
そしてなぜかオカリナ、
他。
通称「音楽部屋」と呼ばれているケン兄の部屋に、楽譜が一枚転がっていても何ら不思議はない。
『音楽』は、ケン兄の唯一無二の趣味で、唯一ケン兄が『普通』じゃないところだ。
音楽マニアを通り越して“音楽オタク”
なのだ、ケン兄は。
「翔太サンの字の方がよっぽど難しいです」
「そうかなあ?でもユカちゃんの字の方が見ない」
と翔太サンは反論らしきことを言う。
翔太サンに出会ったあの日から、玄関でスカイブルーのスニーカーを見かけるようになった。
たいてい彼はケン兄の音楽部屋にいるようだから、たまにしか顔を合わすことがない。
(いつも音楽部屋で何をしているんだろう)
ていう疑問は、部屋にきてあっさり解決した。
翔太サンの脇にある見慣れないギター。
「弾くんですか?」
私の視線に気づいて
「うん。俺、ギターの人」
にっと翔太サンは笑った。
ちょっと前までは「木村佑香」で、もっと前は「梅沢佑香」だった。
新しい苗字はそれなりに気に入っている。
少なくとも「梅沢」よりいい。
お母さんが再婚してそろそろ3年。
初めの頃に何となくあったギクシャクした空気がなくなって、なじんできたと思う。
ケン兄も、お父さんも。
(3年かあ)
そう考えると、お母さんが離婚した年がずっと昔のことのような気がする。
それは私は小5の時だったから、指折り数えてみたら片手でグーが作れた。
「ユカちゃんの字ってむずかしいねー」
感慨にふけっていたから、頭の中が一時停止になる。
「え?」
(ああ、漢字の話)
と気づくまで時間がかかってしまった。
目の前にいる翔太サンが
『空を翔るのショウに、丸太のタ』
と自分の名前の漢字を半ば強引におしえてくれたので、私もおしえる羽目になった。
私の名前を口で説明しても翔太サンにはピンとこなかったらしい。
ケン兄の部屋に連れて行かれ、
結果、自分の名前が書いてある楽譜が今2人の間にある。
私たちを囲んでいるのは、
電子ピアノにギター、
ドラムパッドやトランペット、
懐かしいリコーダー、
そしてなぜかオカリナ、
他。
通称「音楽部屋」と呼ばれているケン兄の部屋に、楽譜が一枚転がっていても何ら不思議はない。
『音楽』は、ケン兄の唯一無二の趣味で、唯一ケン兄が『普通』じゃないところだ。
音楽マニアを通り越して“音楽オタク”
なのだ、ケン兄は。
「翔太サンの字の方がよっぽど難しいです」
「そうかなあ?でもユカちゃんの字の方が見ない」
と翔太サンは反論らしきことを言う。
翔太サンに出会ったあの日から、玄関でスカイブルーのスニーカーを見かけるようになった。
たいてい彼はケン兄の音楽部屋にいるようだから、たまにしか顔を合わすことがない。
(いつも音楽部屋で何をしているんだろう)
ていう疑問は、部屋にきてあっさり解決した。
翔太サンの脇にある見慣れないギター。
「弾くんですか?」
私の視線に気づいて
「うん。俺、ギターの人」
にっと翔太サンは笑った。