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私は足を止める。
体温計が置いてある隣りに、カラフルな箱が陳列している。
避妊用具と気付くまでに少し時間がかかった。
周りをさりげなく確認して、カラフルな配色の箱を手に取ってみる。
ベネトンと書かれていた。
隣にはミチコロンドンと書かれた箱がある。
随分オシャレなパッケージだと思ったらブランド品だった。

(どうしてブランドがこんなの出しているんだろ?)

ささやかな疑問を持ちながら、箱の裏を見る。
使用上の注意とか、どういうカタチかを説明する図があって、まじまじとそれを見た。
見るのははじめてだった。

翔太サンは、避妊をしなかった。

いや、していたんだろうか、とも思う。
『膣外射精は、避妊ではない』と保健体育の教科書に載っていたし、そう習った。
けれど、“実際のこと”は私は全くの無知だった。
教科書には具体的なセックスの過程なんて書いていないし、それが避妊だと言われたら信じたと思う。

同じ棚に、体温計のカタチに似た道具がパッケージに印刷された箱が置いてある。
『スピードチェック!』とか『1分で検査できる』と書かれている。
箱をよく見ると、“妊娠検査薬”という文字を見つけ、驚いた。

(こんなので、わかるんだ)

生理はまだ来ない。
今日でちょうど一週間。

おそるおそる、箱を手に取る。

(もし、妊娠してたら)

脳裏をよぎる。

もし、妊娠してたら?

翔太サンの子どもが、私のお腹の中にいたら?

震えがきた。

産むなんて、絶対できない。
学校があるし、おかあさんやおとうさんに、何て言う?
ケン兄には?
私がおかあさんになるの?
『おかあさん』?
―――無理だ。
頭の中に響く、怒鳴り声。
無理だ。

じゃあ、堕ろすの?
自問する。
赤ちゃんを殺すの?
翔太サンの、
翔太サンの、子どもを?

思考がショートした。

「佑香ぁー、何見てんの?」
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