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私は慌てて棚にそれを戻す。
けれど、遅かった。
目を丸くして、息を止めたエリカ。
エリカはとても素直だ。すこし羨ましいくらい。

「佑香」

「あはは、いろんなものあるなーと思って。こーゆーの見るのはじめてだっ」「佑香」

まくしたてて喋る私の声をエリカがさえぎった。
誤魔化しがきかないんだと、悟る。

「来てないの?」

私は笑って、うつむく。
答えられない。

「それ買って、ちゃんと調べなよ」

「…ちょっと遅れているだけだから」

息を吸う。
何だか、うまく空気が入ってこない。

「いろいろ、あったし」

ぽたり、と床に透明のしずくが落ちた。
顔を上げて、戸惑う。
エリカが泣いている。

「エリカ、ごめん」

その時になってやっと気づいた。
ずっと、エリカを傷つけていたんだ。

「ごめん」

私より背の高い、エリカの頭に手を伸ばし、引き寄せる。
エリカは声を殺して泣き続けた。
少しかたいショートの黒髪。
エリカの体温が伝わってきて、思い出す。

(こんな風に、翔太サンも抱きしめてくれたっけ)

キリキリ、胸が痛んだ。
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