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雪が降っていた。
しんしんと雪は絶え間なく降り続いている。
風はなく、ただ、空から、地面へ。
数歩先の景色が見えなくなるほどの、白い世界。
いつもの通学路なのに、音がない。
あるのは自分の足音くらいだ。

夢の中にいるような心地だった。

たまにすれ違う人や、通り越していく人が現れては消えていく。

(JR、とまったのかな)

久しぶりの大雪で、電車は止まってしまったのかもしれない。
いつもこの時間だったら、もっと人がいるの。

じくじくとおなかが痛む。
指先の感覚がなくなっていく。
傘を持つ手がまっかだ。

私は足を止めて雪を見た。
世界を白く染め上げていく雪。
歩いても歩いても、変わらない景色。
白い世界に閉じ込められたみたいだ。

ここから私は一生出られないのかもしれない。
…そうならいいのに。
しろく、しろく何もかもが染まっていって、
何もなかった、何もなかったんだって。

うれしかったことも
かなしかったことも、全部。

すっと息を吸うと肺に冷たい空気が入ってきて、すこし胸がヒリヒリした。
吐く息が白い景色に重なる。
赤い傘につもった、水を含んだ重い雪を払う。

腕時計を見ると、針が8:15をさしている。

(学校に行かなくちゃ)

でも、足が動かない。
力が入らない。

ほんとうは、学校なんかに行きたくない。
ずっと、ここにいたい。
この白い世界にいたい。
祈ってしまう。

(はやく、終わればいいのに)

(はやく、はやく、終わればいいのに)

学校も、高校生活も、そのあとの未来も
自分がここで息をしていることも。

(おなか、いたいな)

家で飲んできた痛み止めの薬がまだ効いてこない。

はやく、終わって。
もう、これ以上、かなしいことは、いやだ。

突然、くらりと白い世界が揺れた。
世界が真っ白に、染まる。
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