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1-3

「ユカ、何ぼーっとしてんの?」

いつものことだけど、とM高の友人・エリカが付け足す。
はっとする。
そう言えばエリカの買い物に付き合っていたんだった。
大量の雑貨が視界に入ってくる。

「ちょっと異次元に」

意識が飛んでて、と最後まで言う前にあきれた顔とため息が返ってくる。

「ぼんやりしてたら人身事故が起きるよ」

「さすがにそれはない」と言ってみるものの、何度か人にぶつかったことはある。あきれられること請け合いなので黙っておいた。

「次タワレコ行こー」と言われてなおざりな返事をする。
エリカは歩くのが速い。ついて行くので精一杯だ。エリカに言わせると私の方が軟弱で「のろい」らしい。
辛辣な意見だけれど、エリカの嘘をつかないさばさばしたところは良いところだと思う。…時々度が過ぎるけど。

タワレコの中は静かで、私はエリカのうしろをくっついて歩いた。
ケン兄と違って私は音楽に詳しくない。
流行の歌を何となく知っているくらい。

(翔太サンはどんな曲弾くんだろ)

ギターを弾く姿は想像できる。
でもどんな音を出すのかまでは想像できない。

エリカは目当てのCDがあるらしく、邦楽コーナーを私も一緒に探した。
アーティストの名前もうる覚えらしい。
「それなりに有名なラップを歌うグループの最新アルバム」といういい加減なヒントしかない。
ジャケットが見えるようにCDが積まれているだろうという予想の元、エリカの目当てのCDは私が見つけた。
CDは試聴コーナーにあった。

「見つかってよかったね」

「ありがとーユカ!私一人じゃ見つけられなかった」

エリカのいいところは、素直なところだ。
一息ついてふと周りを見ると金色が目に入った。
金色の頭。
H高の制服の二人連れ。


翔太サン、だ。


何やら話をしていた翔太サンと、いいタイミングで目が合った。

―――ので、目を逸らしてみた。
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