なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
「ずっとここにいたの?」
「……ん、茜寂しいかなと思って」
「そっか。ありがとね」
俺の隣に座って茜の写真を見る夏生。
「……ただいま、茜お姉ちゃん」
ほら。まただ。
また昼間の時みたいに泣きそうな顔をした。
俺が隣にいるのに、そんな悲しい顔をするな。
いてもたってもいられず、夏生を背後からそっと抱き締めた。
「……深侑?どうしたの……?」
「……少しだけ…こうさせて……」
夏生が悲しまないようにするのは無理かもしれない。
一度ついた傷はもう二度と癒せはしないから。
でも少しでもいいからその悲しみを俺が隣にいて拭ってやりたいんだ。
だから何があっても夏生の傍を離れない。
大切なものを失う気持ちは誰よりも分かってあげられるから。
【side end】