なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
「…そっか。それは辛かったね。
よく話してくれたね。ありがとう」
翼くんの暖かくて大きな手が私の頭に乗る。
そのまま優しく撫でられる。
翼くんの優しさにまた涙が出そうになる。
また翼くんに甘えるわけにはいかないとぐっと涙をこらえる。
目の前に広がる川をぼんやりと眺める。
辺りが暗くてよく見えないけど、反射して映る街の明かりが川の流れで揺れている。
この川の流れに乗って…
「…どこかに逃げられたらな……」
「…ん?」
「…っあ、いや……」
つい心の中の呟きが声になって出ていた。
しかもそれが翼くんに聞かれてしまった。
慌てて口を塞いでも出てしまった言葉はもうどうにもできない。