なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー
何か言い訳を探さないと。
って探してる時点でもう駄目なんだけどさ!
せめて違和感のないように…
「…じゃあ逃げちゃおっか、僕と」
「……え?」
突然隣から聞こえた言葉に目が丸くなる。
隣にいる翼くんを見上げると、翼くんは手すりに頬杖をついて微笑んでいた。
翼くんは缶コーヒーを飲み干すと近くのごみ箱まで歩いて缶を捨てた。
「4月から転勤が決まってね?
東京に行くことになったんだ」
「と、東京に…!?」
ここから東京はそう簡単にいける距離じゃない。
そうなると4月から翼くんとは会えなくなってしまうということ。
寂しさが募り自分の足元を見て俯く。
すると私の足元に翼くんの革靴が映り込んだ。
翼くんがいる方を見上げる前に手を握られた。
手を持ち上げられるのと、私が翼くんを見上げるタイミングが重なった。