なれたなら。ーさよなら、私の大好きな人ー




「…夏生ちゃん。
僕と一緒に来てくれないか?東京に」


「…え、私…?なんで…」




いきなりのことで戸惑いが隠せないのに、真っ直ぐに私を見つめてくる翼くんから目が逸らせない。




「…好きなんだ。
出会ってからずっと、夏生ちゃんのことが」


「…え、……っ」




すっかり冷めてしまったペットボトルのお茶が手から離れて地面に落ちる。




せっかく翼くんが買ってくれたお茶を落としてしまった。
拾わないとと思うのに、体が凍りついたように動かない。




翼くんが私のことを…好き?




いつから?どうして私?
なんて思うことはたくさんあるのに、それが言葉になって声に出せない。




「…茜のことでずっと負い目を感じてるのは知ってる。
あのことがあったから深侑くんの傍にいることも。

君のせいじゃないよ。
そう言っても夏生ちゃんは納得しないでしょ?

心の傷が癒えなくたっていい。
その考えが変わらなくたっていい。

僕はどんな君も支えてあげたい。
茜の代わりじゃない、君の居場所を僕は作りたいんだ」



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