キライ、じゃないよ。
「えっ、ストーカー?」


車の中もようやく暖房が効いて温かくなってきた。

俺は倒したシートを起こしてやって、あの日護と別れた後のことを説明した。

田淵のプライベートな事を、他人に話すべきじゃないのかもしれない。

だけど、護だけには話すべきだと思った。

でなければ、護に誤解させたまま、好きだと伝えることもできない。


「俺がストーカーらしき人間を見たのは一度だけだったけど、田淵はすごく怯えていたから、今までにももっと何か怖い目にあったのかもしれない」

「田淵さん大丈夫なの?警察には……」

「届けてる、らしい」

「そう。心配だね……。それで樫がボディガードしてるの?」

「ボディガードって……まぁ、関わってしまったし、知らない顔じゃないしな」


はっきり言えば、こんな風に護に誤解されることになったり、面倒なことに巻き込まれたなとは思う。


「田淵さんの家に上がってるのは、そういう理由があるからなんだね……」

「上がってる……って、現在進行形みたくなってるけど、昨夜からの一度だけだからな?俺がストーカーを見た日だけ。田淵が不安がるから、離れられなかった」


樫が必死になって説明してくれるから、本当は疑ってまではいなかったけど、ホッとした。


「分かってるよ。昔から優しいからね、樫くんは」

「言い方に棘があるな」
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