キライ、じゃないよ。
棘があるけど、護の顔を見ていたらその棘も痛みなんて感じなかった。

そんなの、自惚れるじゃんか。

助手席に座りケラケラと笑う護を見ていたら、無性に彼女を抱き締めたくなった。

でも、そこは自制する。

堂々と抱き締められる存在になりたいと、そうなってからだと思うから。

彼女になってくれたら……。

望みを口から出したつもりはなかった。


「彼女になって欲しい」


けれど、隣でキョトンとした表情で俺を見る護に、自分が零した言葉が声となって出ていたことに気づく。


「いやっ、今のは……勝手に口から出てっ」


間抜けとしか言いようがない。

なんで言い訳してるんだ。思ったことは事実なのだから、ここは腹を括って堂々と告白するべきだろ!


「……聞かなかったことにしたら、いいの?」


言うつもりはなかったという意味を汲んでくれたのだろうけど、そんなの嫌だ。


「……聞かなかったことにして」


「うん……」


心なしか、少し沈んだ護の声をポジティブに捉えた。

もう言うしかないだろ。


「さっきのは聞かなかったことにして。で、ここからはちゃんと聞いてて」

「え、あ、はい」

姿勢を正して俺と向き合う護を、俺は真っ直ぐに見つめた。
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