キライ、じゃないよ。
「護、ごめん。絶対タクシー拾って帰って。いいか、絶対だぞ!」


助手席のパワーウィンドウを下げて、護りに向かって声を張り上げた。

護は指で丸く形を作り、笑顔で俺を見送ってくれた。

俺はそんな護の優しさに甘えて、車を出し営業先へ向かった。

仕事の方が大事だと言ってくれた。

それは、今まで付き合って来た彼女とは真逆の言葉。

お互いに仕事に対して誇りを持ち、真面目に仕事に取り組んでいる護だからこそ、俺の大変さも優先するべき状況を組んでくれたのだとおもった。

益々護が愛おしいと思った。

この仕事を終えたらすぐに電話をして、護に会いに行こう。

そして今度こそ告白する。

絶対に、邪魔なんかさせない。誰にも。

そう思った。










まさか、あんなことになるなんて思いもしないかった。

後に俺は、この日護を一人で帰したことをひどく後悔することになる。






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