キライ、じゃないよ。
「あの、田淵さん。ごめんね、樫に聞いたの。警察に相談したって聞いたけど、実際には力になってもらえてないんじゃない?」

「ストーカーってマジな話なの?俺、力になるよ?」

「八田くん、警備の仕事してるもんね」

「防犯の知識なら素人以上だからね」


八田くんなら心強い。そう思って田淵さんの様子を見ていたけれど、彼女は何故か視線を逸らして会話に入ろうとしない。


「田淵さん?」

「……皐月さんって、ホント昔から、お節介だったよね」


迷惑そうな声音に言葉を失う。

田淵さんのことが心配だったからなのに、お節介と言われるなんて思わなかった。


「田淵、心配してる……相手に、それは……?なんだ、これ……」


八田くんが身を乗り出し、田淵さんを諌めようとしてくれたみたいだけど、なんだろう?様子が変だ。

目をこすったり、頭を振ったりしている。

……というか、私もなんだかおかしい。

なにか、すご……く、眠た……?

視界がぐらりと揺れた気がした。

急速に襲いかかる眠気をどうすることもできなかった。

倒れ込むようにカーペットに横になる。

一体自分になにが起こっているんだろう?訳もわからず、けれど身体も思考も思い通りにはならない。






そして、なにも考えられないまま目の前が真っ暗になった。



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