キライ、じゃないよ。
散々泣いて、さらに声が掠れて、目元が熱く腫れ上がってきているのを自覚した。

どれだけ泣いていたんだろうか?

ふと見上げた壁の時計は深夜の4時を示していた。

涙は枯れることはなく、けれど泣き続けるのにも体力がいるのだと初めて知った。

よろけながらも立ち上がり、なんとかバスルームに行ってお湯を貯めた。

身体を洗い流したかった。

もしかしたらと考えるだけで、他人の肌の痕跡が残っている気がして気持ちが悪かった。

男の人と経験したことのない今の自分の体の変化になんて気付くことはできなかった。

でも、もし、八田くんとそういう関係をもったのだとしたら?

ブルリと身体が震えた。

お湯が溜まるまで待てずに、バスルームへ駆け込んだ。

シャワーを勢いよく頭からかぶり、身体中をゴシゴシと洗い流した。

もし受け入れてしまったのだとしたら……?

そう思ったら体の隅から隅まで、ボディタオルで擦り上げた。皮膚がヒリヒリと痛みだしても止めたくなかった。

この痛みが、綺麗に洗い流せている証拠だと思えば我慢できた。

洗いながら、涙はどんどん溢れてきた。もう目元が熱くて痛くて、身体中全部が痛くて……だけど、涙も体を擦る手も止められなかった。


バスルームから出てきた時には精根尽き果てていた。

倒れ込むようにベッドに沈み込む。

泣きすぎたせいか、頭の痛みが酷い。

そして体中がヒリヒリと痛くて目元が熱くて重たかった。

疲れたせいだろう襲ってくる睡魔に勝てずに、いつしか眠りに落ちていた。








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