キライ、じゃないよ。
独り占めしたらダメだもんね。

あの頃樫に片思いしていたのは、私だけじゃない。

7年経って、あの頃声をかけられなかった面々も堂々とアピールできる自信がついたのだろうか。羨ましい限りだ。

確かに声をかけている彼女達は、みんな綺麗なお姉さんだ。樫だってきっとよろこんでいることだろう。

ほら、多分鼻の下を伸ばして……。

そんな樫を見たくなくてそっぽを向いたままの私が、実は樫がどんな顔でいるかなんて知りようもないのだけど。

だけど羨ましいのはほんと。

私みたいに、はなからそういう対象で見られていない人間は、大人になってもきっとアピールなんてできるわけない。

それを考えたら7年経った今でも、スタートラインに立てる彼女達が本当に羨ましい。

友達のラインを油性マジックで引かれている自分は、すごすごと退散するしかないのだ。

近くにあったワイングラスに入った淡いピンクの液体を手に取り、コクリと飲み込む。

あ、いちごのスパークリングワインだ。

シュワシュワと舌の上で弾ける感覚と、その甘さに惹かれて一気に飲み干す。


「おいし」


お酒は好き。中でもワインが1番好きだ。

渋みのある赤ワインやフルーティな白ワイン、飲み会の席では必ずグラスワインを一つは頼んでいる。

1人で飲むお酒は寂しいな。香、受付終わったかな?

キョロキョロと会場を見渡すと、入り口の近くで山近くんと話している香を見つけた。

おっと。早速頑張ってるわけですね、山近くん。
2人話す様子を見ると、あの頃となんら変わらない光景に微笑ましく思う。


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