キライ、じゃないよ。
「全部、原川の計画か?」
本当は今すぐ護を追っていきたかった。
俺達を見た護の傷付いた表情が、目に焼き付いて離れない。
幸島の言う通りだった。少し見ない間に前よりももっと華奢になったように見えた。
今すぐ抱きしめて、その苦しみから解放してやりたいと思った。
けれど、今すべきことは、本当の意味での護を安心させてやることだ。
「……あ、私……」
「今更原川に義理立てしても仕方ないだろう。アイツはきっとあんたを助けないよ。その証拠に全部田淵にやらせてる。アイツは知らなかったで通すだろうな」
「そんなこと……」
怯えながらも、俺の言葉はちゃんと理解しているようだった。
「まさか、八田もグルか?」
「八田……くん?ち、違う。彼は巻き込まれただけ。は、原川さん言ってた。高校の頃から皐月さんのことが大嫌いだった……て、大して可愛くもない、のに樫くんを独り占めして……久し振りに会って、まだ樫くんを独占して……八田くんまで……て。ち、調子に乗ってるから痛い目に合わせるんだ……って」
元来が正直な性格なのだろう。吐き出すと止めどなく流れ出てくる事の真相を聴きながら、俺は、はらわたが煮えくりかえりそうなほどの怒りを覚えた。
「……帰れ。もう二度と顔見せんな」
吐き捨てるように言うと、田淵は「ヒッ」と小さく悲鳴をあげて車から降りて、よたよたと足取りもおぼつかない様子で走っていった。