キライ、じゃないよ。
mamori.6
◇
どの位走ったんだろう。息が上がって身体に力が入らなくなってきた。
樫の会社の駐車場からそんなに距離は離れていない。
本当はもっともっと遠くまで逃げたかった。
あんな場面を見せつけられて、直後樫と目が合った……と思ったけれど、彼が追ってくる様子はなかった。
なんて……何を期待してるの私は。
ホント、私はバカだ。樫が追ってくるわけないじゃない。
樫はきっと知ってしまった。
八田くんから聞かされたあの日の写真のこと。
彼もまた田淵さんから見せられたに違いない。
田淵さんがどう話したのかなんて、想像しなくても分かる。
樫は私を軽蔑しただろう。
……違うのに。
誤解なのに。
誤解だったと、八田くんが教えてくれて分かったのに……。
もう、遅い。
樫は私の事を信じてくれないだろう。
だから、田淵さんと……。
思い切り走ったせいで、少し汗をかいたみたいだ。
吹き抜ける冷たい風が身体を芯まで冷やしていく。
頬がピリピリと痛い。
風を避けるために近くの商業ビルへと入った。
クリスマスを目前にして、ビル内は全てクリスマスカラーに彩られている。
温かくて、楽しくて、ワクワクする……そんな私の心とは真反対の空気に居心地が悪い。
今の私、ドン底なのに。