キライ、じゃないよ。
「その歳でサンタに願い事?」
不意に背後から聞こえた声は、息切れしたみたいに苦しそうだった。
勢いよく振り返った視界に両膝に手をついて肩で息をする樫がいた。
嘘、なんで……。
もう、追ってはくれないと思っていたのに。
田淵さんと抱き合っていたじゃない。
私と目が合っても、ピクリとも動かなかったじゃない。
なのに、どうして今目の前に樫がいるの。
「サンタクロースもさすがにアラサーの願い事は叶えてくれないぞ?」
こっちは驚いて言葉も出て来ないって言うのに、ズケズケと容赦のない言葉を吐く樫。
「なんだよ、ダンマリとか無しな?護が言い返して来ないのってマジつまんねーよ」
「な、なんなの?……樫、頭でもおかしくなったの?」
「ひど、そう言う返しを望んだわけじゃねーんだけど?」
「戻りなよ。た、田淵さんが待ってる……⁉︎いったぁ!」
突然頬を捻られて、その痛みに泣きそうになった。いや、実際涙出てきた。
今のマジで捻ったよね?
成人男性の握力って、40とか、50とかあったりする、そんな力で捻った!
「頬、痛いだろ?」
痛くないと強がりを言えないほど、本当に痛かったから大きく首を縦に振った。