キライ、じゃないよ。
「俺のココ、多分さ、今護が感じたのと同じ位すっげー痛い」


樫は自らの胸をトンと拳で打つ。


「護って、ホントひどい女。何度俺のこと疑うの?」

「樫?」

「あのさ、男って見た目頑丈に見えても、結構脆いのよ?ナイーブなの。その点女ってホント残酷すぎて腹立つわ」

「……ご、ごめん」


何に対して謝っているのか、私自身分からなかった。でも、口からついて出た謝罪に樫は満足したように頷く。


「護、今度俺と他の女のことを疑ったら……どうしてやろうかなぁ」


ヒヤリと背筋に冷気が這うような、そんな眼差しが私を射抜く。

冗談なのか、本気なのか、樫の言葉の真意が読めなくて困惑する。

と言うか、さっきから……。


「樫、怖いよ」


周囲は陽気なジングルベルが流れているというのに、私達の周り氷点下まで下がっている。


「護は、俺のこと知らなさすぎ。高校の頃から俺の本質は変わってない。山近も、多分幸島も俺がどんな奴か分かってる。分かってないのは護だけだ」

「な、なにを……?」


何を知らないと言うんだろう。

私の知っている樫は、いつだって優しくて頼もしくて……。

私は本当の樫を知らない?


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