キライ、じゃないよ。
「焦らしてないなら、聞かせてよ」

「わ、分かってるし……だから、その……」


桜色の唇が、誘うように動く。

潤んだ目、見る間に赤く色付く頬。


「わ、私ね。樫のこと……高校の頃から、ずっと……ずっと……⁉︎」


まるで食べてくれと言わんばかりに赤く熟れた実を、ただ見ているだけなんて、堪え性のない俺には最初から無理な話だったんだ。

胸を押す護の両手首を掴み、窓ガラスに縫い止めた。

驚きに見開く目をあっさりとかわして、そっと唇に触れた。

一度目にいきなりしたキスは、瞬き程の僅かな時間だった。

今は信号待ちでもなければ、邪魔をする輩も存在しない。

時間はたっぷりある。

そんな事を頭の隅で考えながら、一度離した唇を再び近づけ、今度は下唇を優しく喰む。

縫い止められた両手が、キスのたびにぴくんと身動ぐのが可愛くて何度もキスを繰り返した。

緊張していた護の、身体の力が解れていくのが分かる。

触れるだけだったキスは、いつしか甘い吐息と共に深く重なる。

咥内をゆっくりと舌で撫で、逃げる舌を強引に絡めとった。

ん、と小さく漏れた声は甘く、もっと、もっとと際限なく護が欲しくなる。

自分の思うままに、己の欲望を満たしていった。




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