キライ、じゃないよ。
「えーと、護?」

「……」


唇が離れた直後は、息も絶え絶えでトロンとした表情で惚けていた護が、急に不機嫌になっている。

本気で怒っているのとは違うと分かるが、だんまりを決め込んで外を見て目も合わせようとしない。

怒らせた、かな?


「まーもーりーちゃん、ごめん。機嫌なおして?」

「それ、何が悪いか分からず謝ってるやつだ」


あー、うん。たしかに。

あっさり見抜かれて、ヘラッと笑った俺を冷えた眼差しで睨む護。

いかん、マジで怒らせたらヤバイ。


「あー、マジでごめん。怒ってるのは分かるんだけど、何に怒ってるのか分かんないや」


反省をしたと、取り敢えず認めてもらえたらしい。

護はキッと俺を睨み付けると、矢継ぎ早に言葉を繰り出してきた。


「樫の、バカ、エロ、チャラ男!人の気持ち振り回して面白がってるでしょう」

「は?心外だな。俺は確かにバカだし、エロかもしんねーけど、チャラくはない。護一筋だって言ってるだろう」


怒っている内容が納得できなくて憤慨した俺に、護は顔を真っ赤にして、「もういいよっ!」とそっぽを向いてしまった。

こうなったら彼女の機嫌が直るまで、黙って待つしかないか……。


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