キライ、じゃないよ。
「……もう、いいよ。いつまでも怒っていても仕方ないし」


どの位の沈黙に耐えていたのか。

……と言うか、俺の頭の中はやっと思いが通じた護との未来のあれやこれを考えて、ちっとも反省なんかしていなかった。

いや、してます。反省。

黙っていた事を反省とみなしてほしい。


「今日はもう遅いし、そろそろ帰るね。私明日早いんだ」

「えっ?帰るの?」


まさかこれで終わりだとは思っていなくて、思わず声をあげたら、護は驚きつつも車のデジタル時計を無言で指差した。


「……明日、俺も仕事だ」


ガクリと項垂れた俺を呆れた様子で笑った護を俺は恨めしげに見上げた。


「次いつ会える?」

「……今までと同じく、仕事の休みとお互いの都合次第かな?」

「じゃあ、せめて電話位してもいいか?」

「え?あ、でも、私仕事中は持ち歩いてないよ?」

護は病院勤務だし、それは仕方ないのかもしれないが、次の約束も取り付けられず、ただひたすら連絡を待つだけなんて、護寂しくないのかよ。

今までの彼女は、会えないと寂しいって言ってきたのに。


「護って、淡白なのな?普通は……」


失言に気付いた時にはもう遅かった。



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