キライ、じゃないよ。
「普通は?」

「えっ?あ、いや……」

「ふぅん、樫には「寂しい」とか、「会いたい」とか、可愛く甘えてくる彼女がたくさんいたわけだ」


声に棘!

めっさ研がれた棘が飛んできた。


「過去、だろ。それに俺が言いたいのは……」

「樫って、素直に甘えてくる可愛い子がタイプなんだね。よーく分かりました」


俺の言葉に被せるように言って、車の扉に手をかけた護の肩を掴んで引き止めた。


「おい、待てって。護、怒ったまま帰るなよ」

「怒ってませんけど?」


怒っていないと言いながら、その眼差しは冷たく言葉には棘がある。


「怒ってるじゃねーか、俺ら付き合い始めた初日に喧嘩別れとか冗談じゃねーぞ」

「えっ⁉︎」


心底驚いた顔に、今の言葉の何に驚いたのか分からず、護の両肩を掴んで向きなおらせる。


「その、えっ⁉︎ってのはどれにかかる驚きなの?怒ってるってとこ?喧嘩別れってとこ?それともまさか……」


護の目が泳ぐ。

まさかのまさかかよ。


「なんで?俺ちゃんと好きだって言っただろう?」

「す、好きとは言われたけど……」

「好き=じゃねーか?普通」

「……っ、」


護は、普通という言葉に眉根を寄せ再び不機嫌になってしまった。

なんだよ、もう!

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