キライ、じゃないよ。
「皐月さん、この前入った新人さんに頭部外傷の処置の指導してくれる？ちょうど外来からヘルプ入ってたから」


今日のチームリーダーの馬場さんが、カルテとにらめっこしながら声をかけてきた。

50代後半の彼女は、機械とは相性が悪いらしく、週に一度は必ず画面をフリーズさせる。

その度悲鳴をあげながら、若い子達に後始末をさせるから、その都度業務が止まって迷惑しているスタッフも少なくない。


「分かりましたー」


そう返して、話に上がった新人の守川さんを連れて外来に向かった。


「外傷処置は、ここでは初めて？」

「前のところは内科勤務だったので、縫合処置は滅多になかったので、実質初心者と変わりません」


11月に入ってきた彼女は、結婚を機に数年現場から離れていたらしく、初めは電子カルテの操作から覚える事に苦労していたが、それでも20代後半という若さで流石に覚えは早かった。

年が近いということもあり、何かを指導するときは大抵私に白羽の矢が立つ。

覚えの早い彼女のような人なら、指導するのもそれほど苦ではないから気は楽だ。


「お疲れ様です、病棟からヘルプ入ります」


処置室に入ると、外来主任の佐々木さんから申し送りを受けた。


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