キライ、じゃないよ。

「友奈が高校の時、山近くんのことを好きだったって知ってた?」

「え?嘘……」


初めて聞かされる話に返す言葉を失う。

私の反応に原川さんは呆れたように笑った。


「皐月さんも、幸島さんも、腹が立つくらい無神経よね」

「無神経?」

「そう。樫くんも山近くんもあの頃密かに憧れてる女子はたくさんいた。立場は同じはずなのになんの揺らぎもなく2人の隣にいられたあなた達をその女子達はみんな妬んでたわね。幸島さん達は付き合ってたから仕方ないけど……でも、卒業と同時にあっさり別れちゃって……ほんとたまんないと思うわよ。片思いしていた子達にとったら」

「どうして……」


どうしてそんなことを言われなければならないんだろう。

確かにずっとそばにいた。だけどそれは友達としてで、樫にとってはそれ以上には決してならない関係だった。

女として素直に甘えられる周りの女子達をどれほど羨ましいと思っていたか……。

原川さんは知らないくせに。


「香達まで振り回さないでよね」

「私、山近くんのことは興味ないんだ。でも、彼の事を思っている女の子の応援は喜んでしたいと思ってるわ」

「2人は、婚約してるのよ?」

「それが?婚約破棄なんて、今のご時世ザラでしょ?大体私程度が引っ掻き回したくらいでダメになるなら、結婚したってすぐに離婚するのがオチじゃない?」

「は、原川さん!」


原川さんの言葉が許せなくて声をあげると、彼女は「ふん、」と小さく笑って背を向けて病院を出ていってしまった。

一体なんなの?あれは。

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