キライ、じゃないよ。
あの頃ずっといっしょにいたのに香の気持ち、何も気づけなかった。

藤間先輩に揺れたことも、2人がキスしたことも、なにも。


「山近くんに、知られたの?だから?」

「宏也は知らないと思う」

「じゃあ、どうして別れたの?」

「先輩とキスした時ね、すごく後悔した。そのキスした事を宏也に知られたら……って、すごく不安で。でも宏也全然気付かないし、無邪気にずっと一緒にいようなって言われて……。宏也を裏切った自分が許せなくて……だから別れようって言ったの」

「山近くん、納得しなかったでしょう?」

「納得してなかったけど、卒業式済んだ後だったし、会わないでいることは簡単だった。連絡絶って居留守使って……。そのうちアイツは県外出て……」


香からの告白は驚くばかりで、何も言えなくなった。

あんなに仲の良かった2人が別れた時も、香からは「あんまり聞かないで」なんて言われて詳しく聞かないままだったし。


「だからさ、たとえ宏也が浮気したとしても……私に怒る権利ないんだよね」

「なに言って……まだ山近くんが浮気してるとは限らないし、香だってそんな大昔のだったキスひとつで浮気だとか……思わなくても」

「護は?キス一つの浮気は許せる?許してもらう?」


香に突っ込まれて、息をのんだ。

今、樫が誰かに揺れてキスをしたら……私はきっと許せないと思う。

揺れたってことは、気持ちがそこにあったって事だ。

私だって樫以外の誰かとほんの少しでも気持ちのあるキスをしてしまったら……。



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