キライ、じゃないよ。
「心配しなくても、今の樫くんは護以外見えてないし、護だって他に揺れたりしないでしょう?」
香の言葉に、今樫と喧嘩してる現実を思い出した。
喧嘩はしてるけど、でもなんというか……確かに香に「アホらしい」と言われても仕方ないと思う。
コホンと小さく咳払いして、香に視線を向けた。
「結婚の話、勧めてるんでしょう?」
「まぁね、でも幸いまだお互いの両親しか知らない事だし、式場だって探してる最中だし。クーリングオフ可能期間だよ」
ははは、と軽く笑う香になんて言ったらいいのか分からない。
しかも、今日病院に来た山近くんと友奈の様子を見たばかりだから。
「そもそも、山近くんがどうして浮気してるだなんて」
「今まで週末必ず会ってたのに、仕事を理由に会えなくなって。一度アパートに押しかけたら女物の香水の匂いさせて帰って来たところに出くわした」
「香水って……山近くん営業でしょ?接待で匂いついてもおかしくないでしょ」
「その香水、この前同窓会したホテルの中のショップで売りに出されら予定のオリジナルのやつで……」
そこまで聞いてなんとなく分かった。
「香、山近くんと友奈が一緒のところを見たの?」
「 護、もしかして……2人のこと知ってるの?」