キライ、じゃないよ。
「なにも知らないよ。ただ、今日2人が病院に来た」
心の中で山近くんに謝りながら、けれど私は香の友人だ。優先するのは親友の気持ち。
私が香の立場だったら、ちゃんと知りたいと思うから。
「宏也と友奈が?どうして病院に?」
私は山近くんの怪我のことと、その怪我がどうやら友奈と関係しているようだと説明した。
見る間に香の表情が暗く沈んでいく。
「4、5針縫ったけど、頭には異常なかったみたいだよ」
山近くんの怪我の様子を知らせると、一瞬ハッとして、直後安心したかのように息を吐く。
そしておもむろに口を開いた。
「……そっか、相手友奈なの。なんだかなぁ、どうせなら全く知らない人だったらよかったのに」
「まだ、浮気だと決まったわけじゃないでしょう?」
「浮気じゃないかもしれない。だけど、2人が一緒にいた事は事実だよね」
「香……」
「婚約者がいながら、女と2人きりで会うって……しかも、同級生とか。どんなワケがあるんだろうね」
自嘲気味に笑う香が痛々しく感じる。
「友奈、あの子高校の時、宏也のこと好きだったんだよね」
「え?香、知って?」
「知ってるよ。知らないふりして、友奈の前でわざといちゃついて……嫌な女だったなー」