キライ、じゃないよ。
「た、確かに面倒くさい、ね」
でしょう?と頷く香。
でも、あの時は車の中とはいえ、外だし、あのままそっちに進むなんて考えられなかったというか……。
キスだけで十分だと思っちゃってた。
男の人はやっぱり違うんだろうか?
というか、考えてみれば私経験ないんだよ?初めてなんだよ?どういう流れで、そういう流れになるのか分かるわけないし……。
「護、そういえば、そっちの経験って……」
話の流れで、私が何を考え混乱しているのか、勘のいい香は分かったみたいだ。
「……聞かないで」
「マジか、」
「話だけじゃなくて、そっちの方もめんどくさいって思われる……」
「お初を喜ぶか、めんどくさがるかは相手によって違うけど……樫なら単純に喜ぶんじゃないの?」
そんなの知らないし、分からない。
でも、樫にはめんどくさいと思われたくない。
「……なんだか初々しいなぁ。私にもこんな頃があったんだよね、きっと」
トマトを口に運び、ペロリと唇についたトマトの果実を舐めとった香はなんだかすごく色っぽい。
そりゃあ、既に『女』なんだもんね。私にはない色気が其処彼処に溢れている……んだろう。
樫もきっと、そういう人がめんどくさくなくて好きかもしれないと考えれば、地味に落ち込む。
なんでとっとと捨てておかなかったんだろう、私。