キライ、じゃないよ。
「ごめんねぇ、心配かけて」
30分位横になって、ゆっくり起き上がった香。
顔色がまだ悪い。
「びっくりしたけど、香が貧血って珍しいね」
健康を絵に描いたような彼女が、こんな風に倒れたことは、長く付き合っているけれど初めてだと思う。
「最近ちょっと風邪ひいてたみたいで。体もだるいし、なんか妙にイライラするし……」
聞いていて微妙にその症状に引っかかる。
「ええと、香?ちょっとお尋ねしますけど」
「んー?」
「アレ、来てる?」
アレ、で通じてしまうのは女同士だから。
見る間に真剣な表情になって、指折り数え始めた香を静かに見守る。
「……最近不順だったから、気にしてなかったけど、そういえば今月も遅れてるわ」
「……」
香の言葉にお互い顔を見合わせて、大きくため息をついた。
「とりあえず、送る。香の車は……」
「代行呼ぶよ」
「どうして。山近くん呼べばいいじゃない。それに、妊娠してるか調べるなら山近くんにだって……」
「やだよ。浮気してるかもしれないヤツに知られたくない」
「は?何言ってんの。もし妊娠してるなら、そのお腹の子は……」
「待って、こんなとこでそんな言葉口に出さないで」
「……ごめん。じゃあ、樫を呼ぶ。それならいいでしょ?」
樫にタクシーで来てもらって、香の車運転してもらおう。
でも、と渋る香を無視して樫に連絡をした。