キライ、じゃないよ。
kashi.7
◇
「何やってんだよ、おまえ」
頭にガーゼを当てた山近の姿を見て、呆れてしまった。
「仕方ねぇだろ?やっと出来上がったって勝間から連絡もらってさ。結構舞い上がってたんだなー俺。階段踏み外して真っ逆さま……情けねぇわ」
「まぁ、浮かれる気持ちは分からんでもないけどな」
今日、見せたいものがあると山近から連絡をもらい、アパートまでやって来た俺は、今目の前にいる怪我をした山近に出迎えられた。
結婚を前提に付き合っている2人は、主に幸島の家に山近が押しかける形で半同棲状態だと聞いていた。
今日はあえて山近のアパートに呼ばれたが、これを見せるためだったんだと小さなビロードの箱を目の前にして思った。
「これ、金も時間もかかったんじゃね?」
「体験コースもあるみたいなんだけどな、仕事の休みは香と一緒にいたいしな。1人で動くとなると仕事が終わってからでしか時間なくてよー。ま、勝間が先方に話つけてくれて助かったわ」
「勝間も面倒見いいよな」
「式場の方もな、ちょっと融通利かせてくれるらしくて、ほんと持つべきものは同窓生だよなー。」
「で?幸島には?」
「コレが出来たら改めてプロポーズして、式場の事とか、一気に話詰めてくつもり。もう逃げられたくないんで!」
「……あぁ、昔は振られた理由がわからんっておまえ結構荒れたもんな」
「まぁな」