キライ、じゃないよ。
先に行く護の車の中でどんな会話がなされているのか分からなかったが、じきに幸島のアパートに着き、駐車場に彼女の車を置いてから車を降り、3人が車から出てくるのを待った。
そのうち護が先に車を降り、俺に気付いて歩み寄って来た。
「樫、ありがとう」
「いや、いいよ。それより、アイツらは?」
車の鍵を護の手に返し、未だ出てこない2人の様子を聞いた。
護は小さく溜息をついて、静かに車の方を見守っている。
「……いいから。大人しくしてろ」
そのうち後部座席の扉が開き、そんな山近の声が聞こえて、山近が姿を現し幸島を横抱きに抱えた。
「だ、大丈夫だから」
「うるさい。体調が悪かったなんて聞いてねーぞ。絶対降ろさないから、恥ずかしいんなら顔隠してろ」
低い声が山近の静かな怒りを表している。
幸島も逆らう気力もないのか、言われるまま山近の胸に顔を埋めた。
そんな幸島の様子に満足したのか、山近の表情がほんの少し和らぐ。
「あ、鍵開けるね」
護は2人の先を行き、幸島のバッグから鍵を取り出して扉を開け、2人が中に入るのを見守った。
「幸島、大丈夫なのか?顔色悪かったみたいだけど……」
護に先に入るように促して、自分が入った後鍵を閉めた。