キライ、じゃないよ。


「さっき電話で話した通り、貧血だと思うんだけど……多分、香は」

「幸島は?」


言い淀む護に答えを促したが、彼女はリビングに入っていった2人の方を見ただけで何も答えてくれなかった。

まず聞かなくてはならないのは、俺じゃなく山近ってことか。

ソファに座る幸島をその側で床に座って向かい合う山近。

2人の微妙な空気を、俺達も少し離れたところで見守った。


「横になってなくていいのか?」

「いい。ここで」

「……明日病院行くぞ」

「は?」

「具合が悪いんだろう?皐月の病院で診てもらおう。なぁ、皐月……」

「え?うちはちょっと……」


護は焦った様子で山近の言葉を遮った。


「だめだよ。護の病院は」


幸島があっさりと答える。


「なんで?」


食いつく山近を鬱陶しそうに睨んだ後、幸島は大きく溜息をついた。

俺にも2人が何を隠しているのかさっぱり分からない。


「行くとしたら、産婦人科だから!護の所婦人科ないでしょう?」


吐き出すように言った幸島の言葉に、山近は勿論俺も言葉を失った。

だって、それって……。


「……香、それって。その、え?」


山近が狼狽えるのは仕方がないと思う。

俺も山近にかける言葉が見つからない。



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