キライ、じゃないよ。
「アイツらの子供かぁ……」
護の車を運転しながら、俺はなんだかすごく不思議な気持ちでいた。
学生の頃からずっとつるんできた友人が、まさか父親になるなんて、なんだか別世界の出来事みたいだ。
「まだ、はっきりそうだと決まったわけじゃないけどね」
「ま、でも結婚するって決まってるんだし、なんの問題もないだろ」
「ない……のかな?問題」
「護?」
「……なんだよ。何かあったのか?山近は純粋に幸島との未来を考えてる。それは、幸島も同じだと思っていたけど?」
「……香は、そう思ってないみたい」
「は?なんで!」
俺が山近の立場なら、それってすごくショックだ。
結婚を考えている相手に信じてもらえないなんて、そんなの……。
「香にも言い分はあるよ。……気されてる……かもしれないって」
語尾が掠れていくせいで聞き取れないし、こんなんじゃあ運転に集中できない。
俺は車を脇に止めて護に向き直った。
「護、ちゃんと話してくれない?俺にとってもアイツらは大事な友人だ。幸せになって欲しいと思ってる」
「私だってそうだよ。でも、不安を抱えたまま結婚なんてできないでしょう?」
「幸島は山近のどこが不満なの?アイツ、幸島にベタ惚れだろ?仕事帰りに幸島のためにあんな苦労して……」
「え?」
「あ、」
しまった。山近には誰にも言うなって口止めされていたのに……。