キライ、じゃないよ。


「中、入ろうか」


肩を抱かれて、樫に促されるまま扉の鍵を開けて中に入った。

家の電気をつけて、靴を脱いで上がる。

部屋のエアコンをつけた後、樫を部屋に通してソファを勧めた。

コートを脱いだ樫がソファに腰掛けたのを横目で見ながら、自分はキッチンでお湯を沸かし始める。


「あ、あんまり見ないで。恥ずかしい」

「あ、ごめん。なんかさ、シンプルで余分な物がなくて、護らしい部屋だなって思った」

「殺風景でしょ。物が増えるの嫌いなんだ。」

「そうなんだ。俺の部屋はなんか雑然としてるかも」

「そうなの?はい、コーヒーでよかった?」


目の前にコーヒーの入ったマグカップとスティックシュガーとミルクのポーションを置いた。


「サンキュ、ミルクだけもらうな」


ポーションのミルクを1つカップに入れて混ぜる樫と向かい合う形で私も座った。

コーヒーを飲んでいるせいか2人とも黙ったままだ。

樫は余裕があるみたいだけど、私はさっきから心臓ばくばくしてて、なにを喋ったらいいのか、この後どうすればいいのか分からない。

まだ、勢いに流されて的なものなら、なにも考えずに済んだのかもしれないけど。

こんな、まったりとお茶を飲む的な雰囲気からどうやったら、そういう流れになるのか想像すらできない。

なんせ経験がないもので!


< 178 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop