キライ、じゃないよ。
kashi.8
◇
やばい。
さっきから顔がにやけて仕方ない。
他人から見たら変態扱い間違いないわ。
でも。
隣を歩く護を見下ろして、またも頬が緩むのが分かって慌てて顔を逸らした。
「ね、樫!あっち行こう!あそこらへんの店からいい匂いがする!」
俺の袖を引き、指を指した先には露店が並んでいる。
あれから2人で車に乗って出かけた先で、市が主催しているイベントの垂れ幕を見つけてこの公園へやってきた。
広大な敷地の中に、遊園地や植物園、芝生広場に並ぶ彫刻や池ではボートにもなれるらしい。
祝日となる今日はイベントも開催されていて、公園内は露店が数多く並んでいる。
雪こそ降っていないが、風は冷たい。それでも大勢の人がこのイベントに訪れている。
護に引き摺られるようにして、並ぶ露店を見ていく。
定番のたこ焼き、焼きそば、焼き鳥、わたあめ、りんご飴、お祭りの露店メニューが並ぶ。
朝食もまだだった俺達は、焼きそばとたこ焼きを買って、ベンチに並んで座った。
「美味しい!ふっつーの焼きそばなのに、こういうところで食べると美味しく感じるのはどうしてなんだろう」
「護、おまえ口元に青のりついてるぞ」
子供みたいにはしゃぐ護の唇についた青のりを指で拭ってやると、彼女は恥ずかしそうに俯いて「ありがとう」と言った。
なんだよ、その可愛らしい反応は!
「が、ガキかよ」
こっちまで照れ臭くなって、明後日の方を向きながら揶揄うように言うと護は「なによ!」と拗ねてしまった。