キライ、じゃないよ。
「あ!樫くん、皐月さん!」
背中に掛けられた声を聞いた途端、大きく溜息が出た。
振り返ると八田がいつの間にか近くまでやってきていた。
さっきまで少し離れた場所にいたのに、俺達を見つけてわざわざ追ってきたのかと思わせるような速さだ。
「八田くん、休みの日までお仕事大変だね。お疲れ様です」
護は丁寧に頭を下げて、仕事中の八田を労う。
あんなことがあった相手だというのに、今の護の様子からはそんな過去はみじんも気にしている様子がない。
何もなかったとはいえ、裸を見られた相手に抵抗ないのかよ?と少し腹が立った。
八田の方も何を考えているのか、全然分からない。
八田が護に惚れているのは知っている。正々堂々と告白した姿を見ているから。
護と俺が2人でこんなところでデートをすることをなんとも思っていないんだろうか?
読めない男だ。
「この仕事は休日、祝日関係ないしね。それよりキミ達はデート?」
「デートだよ。護と付き合うことになったからさ。だから、その……」
もうちょっかい出してくるなと釘を刺したいのに、その言葉をはっきり言えない。
ほんの少し罪悪感もあるせいだ。
告白に順番なんか関係ないと思う。
でも……。