キライ、じゃないよ。
「……で?なんで電話じゃなくて俺んちに来てるんだ?」


2DKのアパートが独身生活謳歌中の俺の拠点。

職場の同僚達が酒と食べ物持参で訪れ、泊まっていくから、隣の和室の襖の中は客用布団が2組。実家から持ってきてしまってある。

目の前の山近も何度もその客用布団には世話になっているうちの1人だ。

家に上がるなり、持参したアルコールとつまみを俺に押し付けると隣の和室に布団を敷き始めた。


「おまえんちからだと職場も近いしな。ほら、これでいつでも眠れる。さ、飲むぞ!」


今度は洋室のテーブルの前を陣取り、テーブルをバンバン叩いて酒を要求し始めた。

まぁ、慣れているから別にいいんだけど。話したい事もあるし。

テーブルに山近が買ってきた酒の袋を置き、皿を数枚持ってきておつまみを広げた。

目の前にはちょっと高価そうなチーズアラカルトが安い皿の上に並ぶ。

そして地元で有名な唐揚げの店の手羽先も。

意外とマメなヤツで、飲み物はコンビニで買うくせに、つまみはちょっと贅沢をする。

奢られるこちらとしてはありがたい限りだ。


「同窓会に乾杯!」

「なんで、同窓会に乾杯なんだよ」


言葉のチョイスを不思議に思い山近に尋ねた。

胡座を組んでビール缶を掲げていた山近の目が急にマジになって、俺は無意識に体を引いた。





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