キライ、じゃないよ。
ちょうど信号が黄色に変わる。普段なら進むところを後続車もなかったから敢えて止めた。
「甘いの、キライだっけ?」
「……キライ、じゃない、です」
「俺、護に関しては糖度抑えられそうにねーわ……」
右肩のシートベルトを緩めながら、俺は少しずつ身体を護の方へと寄せた。
「樫、近い……よ」
「まぁた、逃げる」
「だって、この体勢って……」
護の言葉を遮るように、顎をすくい取る。
「キス、しますよ?」
「だから、どうしていちいち言うの……」
「護が逃げるからだろ?もしかして、キス、キライ?」
さらに赤くなる護が可愛くて、本当は今すぐにでもキスしたいのをぐっと堪えた。
「……言わせ、ますか?」
「言わせ、ますよ?」
拗ねた顔すら可愛いや。
「……キライ、じゃないよ……てか、この体勢が恥ずか……んんっ、」
我慢の限界。
それでなくても、大体こういう時は邪魔が入るもんだ。
俺は強引に護の唇を奪い、舌を絡めた。
途端に響くクラクション。
ほらな。
でも、今は無理。
空いた手でハザードを点け、シートベルトを外して助手席のシートを倒した。
倒れた時に身体に衝撃が走ったのだろう。護の手が俺の胸を抗議を込めて叩く。
その手をあっさり押さえつけて、思う存分護の唇を味わった。
完