キライ、じゃないよ。
「彼女、可哀想」


「そりゃあ、振られたって仕方ないわ」


護と幸島が頷きあって、俺に冷たい視線を向けて来る。

幸島には別になんと思われたっていいが、護には冷たい男だと思われたくない。


「これじゃあ、もし連絡を取ったとしても、気づかれそうにない………」

「気付く!……それにちゃんと返すし!」


若干被せ気味に声を上げた俺に、護が驚いた表情で見つめてくる。


「いや……その、ボチボチ仕事も軌道にのって来たし、プライベートも充実させたいと思ってるし?」


なんだか言い訳が下手な自分にムカつく。

山近だったら、きっと多分ストレートに伝えただろう。

羨ましいくらい、前向きなコイツなら。

チラリと視線を向ければ、俺の視線に気づいた山近が視線で『押せ押せ』と訴えかけてくる。

俺も、伝えればよかった。

『護からなら、すぐに電話にも出るし、絶対返信だってする』と?

付き合っていたわけでもない、ただのクラスメイトに言われたら、引く……だろ。やっぱり言えねぇ。


「そうなんだ……それで、あんなに……」


ボソッと呟きに落ちた護の言葉は、冷静さに欠けていた俺の耳には届かなかった。
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