キライ、じゃないよ。
『そんなことないよ。宏也から聞いたもん。樫くん護と再会出来たことすごく喜んでたって』


「だから、それも山近くんの勘違いだって。多分樫は私に連絡先を知られることも、私の連絡先を知ることも嫌だったんだよ。あの時流れで教える羽目になって、きっと後悔してるんじゃない?」


そうでなければいいと思いつつも、きっとそうなのだろうと現実が知らしめる。

連絡が来ないことが、何よりも明確な事実だもん。

樫、あの時沢山の女子と連絡先交換してた。

私じゃなくて他の誰かと連絡しあってるんだよ、きっと。

もう、いい加減吹っ切らなきゃダメなのにね。ただの同級生だったら、また同窓会でお喋りくらいはできるだろうし。


「あ、そろそろ休憩が終わるから、またね」


気付けば1時間の休憩が終わる間近だった。香に別れを告げてスマホをバッグへしまう。

午後からは外来のヘルプだ。頑張ろう。

気合いを入れ直してスタッフルームへ一度戻り、支度をして外来に向かった。

午後の診療開始まで10分。既に待合室は半数の席が埋まっていた。今日も忙しそうだと自然漏れるのは溜息だ。

外来診察室に入り、ヘルプに来たことを伝え準備を始めると間もなく医師も診察室に入って来た。

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