キライ、じゃないよ。
「そう言えば、進路指導室に中本いたじゃん。あいつクリスマスに皐月のこと誘ったって噂だし。もしかして……」

「……うるさい」


耳に入ってくる雑音にイライラしていた。

聞きたくもない話を聞かされることが、こんなにも苦痛だなんて思わなかった。

嫌なら聞かなければいいんだ。ここから……あいつらから離れればいい。

けれど話題は護の事で、その内容が気になって離れることもできない。

思わず零した呟きを、剣呑な声音が拾った。


「なんだよ、機嫌悪いな」


低く太い声が挑発するように小さく笑った。


「……なんだかんだ言ったって、樫だって皐月の事が好きなんじゃねぇのか?近くにいすぎて気付けないとか」

「なんだ、それ。ダセェ」

馬鹿にした笑いにイラつきはMAXだった。

相手にしなきゃいいのに、普段なら絶対相手にしないのに。

どうしてこんなにもイライラするんだろう。

イラつきの理由が分からず、かといって言われっぱなしは嫌だった。

誤解されるのも嫌だったし、はっきり否定しておかないと、有る事無い事噂されてしまう。

そんな不安もあった。


「……しつこいな。俺は護の事なんてなんとも思ってないし、アイツが誰を好きでも俺には関係ない」


幾分感情を抑えて言葉にした。
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