キライ、じゃないよ。
戸惑う手と弱気な心

mamori.3





「樫、どうしたの?さっきから全然食べてないけど」


八田くんとの飲み会の席に、偶然現れた樫と山近くんだったけど、さっきから香が山近くんを肘で小突いている様子を見てると、どうやら彼女が自分以外の男の人と飲みに行くのが心配で偶然を装って乱入したってところかな?

多分樫は道連れにされたんだろう。

相変わらずお人好しというか、付き合いがいいというか。

そんな樫が飲み会が始まるなり、頼んだビールを一口飲んだきり、ボーッとしているのが気になって声をかけた。


「……え?あ、いやなんでもない。食うよ、腹減ってるから」


そう言ってビールをグイッと傾ける。

私は並んだ料理の中から適当にお皿に取って、樫の前に置いた。


「ありがとう」

「ちゃんと食べないと、酔いが回っちゃうからね」

「あぁ、分かってる」


言われるまま料理を口に運ぶ樫の様子を見てホッとした。

こんな状態だけど、こうしてまた樫と会うことができたのは素直に嬉しい。


「……わ、悪かったな。邪魔したみたいで」


不意に樫がポツリと落とした言葉に、ハッとする。

邪魔って……もしかして誤解してる?

香もいるから変なふうに誤解されることはないと思っていたけれど……。

そこまで考えて、その考えを振り払うように首を振った。




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