キライ、じゃないよ。
私と八田くんのことを気にしてくれているのかと一瞬自惚れたけど、そんなわけない。

単に心配したのだろう。婚約者がいる香が八田くんと2人きりで飲みに行くはずはないから、多分この会は私と八田くんと2人の間で約束されたものだと、勘のいい樫なら気付いているはずで。

だからこそ八田くんと私の邪魔をしたことを申し訳なく思ってる。

そっか。

気にしてくれるわけないよね。私が誰と飲みに行ったとしても、誰と会おうとも、気にしてくれるわけがない。

分かっていたけれど、なんだかひどく惨めな気持ちになる。

山近くんみたいに、気にして乱入してくれるような彼がいる香が、本当に羨ましい。


「樫こそ、せっかくの週末なのに、付き合わされて大変だね」


「付き合わされ……?いや、俺は……」


「皐月さん、グラス空だね。次何飲む?」


樫の言葉に八田くんの気遣いが被さる。


「あ、じゃあ、みかん酒にするね」

「オッケー。樫くんは?もう一杯生でいい?」

「ああ、サンキュー」


手際よくみんなに追加のドリンクを聞いて店員さんを呼んだ八田くん。

彼は本当に昔とは違う、別人みたいに変わった。

それが、私のためだって言う。

信じられないけど、彼の気持ちは素直に嬉しいと思う。

だけど、私が好きなのは……。

そばにいたいと思うのは……。

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