キライ、じゃないよ。
樫は一体何を考えているんだろう。
どうしてそんなことを聞くんだろう?
疑問符が頭の中を占めていく。
「……護は、今でも俺のことがキライ?」
苦しそうな呟きは、右の鼓膜を震わせその言葉の意味を緩やかに脳へと伝える。
さっきから私に向けてきた樫の言葉に、1つも答えられていないことに気付く。
でも、答えようがない。
私が本心を答えたら、樫はきっと困る。
きっと迷惑だと思うだろう。
どうして答えに困る問いばかり投げかけてくるのか。
本心をぶつけて困らせてやりたいとも、思う。
ずっとずっと、高校の頃からずっと樫が好きだったのだと。
あの時、樫が自分のことを対象外だと言ったあの時、私がどれほど傷ついたか分かるかと。
結局言葉にできずひたすら黙り込む私に、樫はどう思ったのか、体を包み込む樫の腕の力が緩んで耳元に小さな溜息が落ちた。
「ごめん。こんなことして迷惑だったよな」
男性から抱き締められるということに慣れていない私は、多分相手が樫ということも合わさって、緊張でガチガチだった。
私が迷惑だと思っていると感じたのはきっと、こんなシチュエーションにうまく甘えることすらできない頑なな私の態度のせいだ。
けれど樫の腕の力が解けて彼の熱から解放されると、途端に寂しくて心許無く感じた。
咄嗟に振り返って、樫の腕を掴み彼を見上げる。
キライ、じゃないよ。
樫の事が好きで好きでどうしようもない。
樫は……私のことをどう思ってるの?
素直に声を出せればいいのに、唇を僅かに開いても、言葉として紡がれることはなかった。
喉の奥が貼りついたようになって、苦しくて声が出ない。
溢れたのは吐息だけ。
白い息となって樫と私の間でゆっくりと溶けていく。
どうしてそんなことを聞くんだろう?
疑問符が頭の中を占めていく。
「……護は、今でも俺のことがキライ?」
苦しそうな呟きは、右の鼓膜を震わせその言葉の意味を緩やかに脳へと伝える。
さっきから私に向けてきた樫の言葉に、1つも答えられていないことに気付く。
でも、答えようがない。
私が本心を答えたら、樫はきっと困る。
きっと迷惑だと思うだろう。
どうして答えに困る問いばかり投げかけてくるのか。
本心をぶつけて困らせてやりたいとも、思う。
ずっとずっと、高校の頃からずっと樫が好きだったのだと。
あの時、樫が自分のことを対象外だと言ったあの時、私がどれほど傷ついたか分かるかと。
結局言葉にできずひたすら黙り込む私に、樫はどう思ったのか、体を包み込む樫の腕の力が緩んで耳元に小さな溜息が落ちた。
「ごめん。こんなことして迷惑だったよな」
男性から抱き締められるということに慣れていない私は、多分相手が樫ということも合わさって、緊張でガチガチだった。
私が迷惑だと思っていると感じたのはきっと、こんなシチュエーションにうまく甘えることすらできない頑なな私の態度のせいだ。
けれど樫の腕の力が解けて彼の熱から解放されると、途端に寂しくて心許無く感じた。
咄嗟に振り返って、樫の腕を掴み彼を見上げる。
キライ、じゃないよ。
樫の事が好きで好きでどうしようもない。
樫は……私のことをどう思ってるの?
素直に声を出せればいいのに、唇を僅かに開いても、言葉として紡がれることはなかった。
喉の奥が貼りついたようになって、苦しくて声が出ない。
溢れたのは吐息だけ。
白い息となって樫と私の間でゆっくりと溶けていく。