キライ、じゃないよ。
「田淵ちゃんっ、」


店の扉が開くと同時に、原川の田淵を呼ぶ声が店内に響いた。


「原川さん……」

原川を見てホッとした顔をして、田淵は窓際へ身体をずらし、原川の席を空けた。


「大丈夫だった?もう心配したよ」

「う、うん……。樫くんが来てくれたから」

「本当に良かったよ。樫に連絡ついて」


2人のやり取りを黙って見ていたが、原川も来たことだしそろそろ何があったか聞いてもいいだろう。


「一体何があったわけ?俺急に呼び出されたんだから、聞く権利あるよな?」


こちとら護との貴重な時間を割いてまで駆けつけたんだから。


「ごめん。ちゃんとわけを話すから……田淵ちゃん話してもいいよね?」

「えっ?……あ、うん」


原川が田淵に確認した時の田淵の様子に違和感を感じた。

ハッキリとは分からないが嫌な感じだ。


「田淵ちゃんね、ストーカーの被害に遭ってるの」


深妙な顔をした原川の口から物騒な言葉が出て来た。

そこからは全て原川が田淵に代わって話してくれた。


「で?そのストーカーに、さっきまでつけられていたと……」


俺は敢えて田淵に尋ねた。

田淵自身のことなのに、彼女が一言も話さないことが不思議だったから。


「う、うん……最初は気のせいだと思ったんだけど……」


チラリと原川を気にしながら、田淵は答える。


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