キライ、じゃないよ。
「警察には?」

「そ、相談はしたよ。……でも」

「警察って実害がないと動かないって、アレ本当なんだね」

「つけられてるのは実害にならないのか?」

「実際に声をかけて来たわけでもないし、ただ振り返ると相手も止まるんだって。走れば同じ速度でついて来て……でも夜だと顔もよく分からないしって……そうだったよね?」

「あ、うん」

田淵から事前に相談を受けていたのだろうか?原川は淀みなく話を続ける。

合間合間で原川は田淵は確認を取るのを忘れず、田淵はただ頷くだけだった。


「まぁ、理由は分かったけど。こんなことが続くなら正直もう一度警察に相談しとけよ。今日の田淵すごく怖がってたじゃん。そんな思いしながら生活できないだろ」

「そうなの!私だって同窓会でその話聞いてから心配で。こんな時彼氏でもいたらボディガード頼めるのに」

「か、彼氏とか無理だよ……ほら、私ってこんな地味だし、男の人から見て魅力ないんだ」


高校時代の田淵の印象は、正直薄い。ただ俺のタイプじゃなかっただけで、それが他の男子達にもそうだったかは分からないし、今の田淵は地味ではあるが清楚で優しげな女性に見える。


「そんなことないだろう」

「え、そ、そうかな」


世の男性の1人として一般的な意見を述べたつもりだが、何故か嬉しそうな田淵に頬がひきつる。
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