キライ、じゃないよ。

「ねぇ、樫って◯△駅に会社があるんだよね。で、車で通勤してるんだったよね」


どこから聞いたのか、俺のことをちゃっかりリサーチしてやがる。

こいつのこういうところが、あまり好きじゃないんだ。


「そうだけど……」

「ねぇ、少しの間でいいから、田淵のこと助けてよ」

「は?」

「原川さん?」


俺と田淵は同時に驚いた声を上げていた。


「同級生が困ってるのよ?樫、か弱い女子が困ってるのを見捨てられる薄情なヤツだった?」

「見捨てるって……俺にはどうしようもできないだろう?ストーカーだぞ?田淵のことを考えたら警察とか専門に任せた方がいい」


正直巻き込まれるのはごめんだと思った。

これが惚れた女なら、他人に任せておくことなく自分が盾になって守るだろう。

だけど、ただの同級生の為に身体は張れない。

薄情だと言われれば、その通りだと自分でも思うが、本心なのだから仕方ない。

渋る俺に原川はしつこく掛け合って来た。


「分かった。それなら、専門の業者に相談するわ。私の知り合いに警備会社に勤めてる人がいるから」

「そうしてくれ」

「でも、すぐには話ができない。だから、その人と話ができるまででいいから田淵ちゃんの力になってよ」

「力にって……?」


流石にこれ以上断ることはできなかった。そこまで薄情にはなれないというのもあった。

まぁ、同級生のよしみということで、原川の提案を了承した。




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